自作キーボード”Ambi-MINI"について

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はじめに

今回は、私が設計した30%キーボード”Ambi-MINI(アンビ-ミニ)”に関する記事について書いていきたいと思います。”Ambi-MINI”は一言で言ってしまえば”Tenalice-Ambidextrous(テナリス-アンビデクトラス)”をぎゅっと小さくしたものですが、生まれた背景にはある”挑戦”がありました。

特徴

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”Ambi-MINI”

"Ambi-MINI"は、中央に45度角で配置された6つのキーが特徴的なAlice配列・Row-staggerdの30%キーボードです。30%キーボードのためキー数が36しかなく、さらに左右の端にShiftやCtrlなどのキーがありません。このキーボードでは中央にそれらのキーを集約しています。

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中央キー

中央キーは、上4つがアローキーとなっており、左下がSpace、右下がEnterとなっています。また長押しでモディファイアやレイヤ切替を行います。詳しくは以下のcheat sheetをご覧ください。

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L0

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L1

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L2

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L3

そしてもう一つの特徴はアンダーグローLEDの搭載です。ちなみに当時の私はLEDについて設計はおろか、はんだ付けすらしたことはありませんでした。(そして後述しますが見事に失敗もしました)
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設計の経緯

この"Ambi-MINI"、生み出されるきっかけはとあるツイートからでした。

"キムラシンショクバ"さんが"Tenalice-Ambidextrous”のアクリル積層ケースを設計されているところのツイートです。当時の私は、上記ツイートへの返信にもあるとおりLEDにはさほど興味がなかったわけですが、ツイートで引用されている”Design03”の、円形アクリル積層とLEDグラデーションがマッチした美しい写真を眺めていると、アクリルとLEDの相性の良さをあらためて感じました。

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reddit.comより引用

するとだんだん自作キーボードのLEDの実装方法や仕組みについて興味が湧いてきました。私の性格上、こうなるともう止められません。すぐLEDについて調べはじめました。当時"Ambi”の入荷お知らせメールを登録していただいている方がいる状況で、そちらを優先せずにLEDに手を出すなど…という葛藤もあったのですが気が付けば設計まではじめてしまっていました。

設計

"Ambi-MINI"では新たに2つのことについて挑戦しました。

①LEDの実装

1つめはもちろんLEDです。知識が乏しいためいつも苦しい回路図と基板の設計…。今回も自作キーボード界隈の先人が公開してくださっている情報を頼りに調べていきます。いくつかのキーボードの回路図と実装を参考にさせていただき、真似ながら設計していきました。

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LEDの回路図

当時、きちんと理解が出来ていなかったことが原因でフットプリントの誤りが基板発注後に発覚しました。”自分がどのLED個体を実装しようとしているか”や”その個体のデータIn/Out仕様と配線が正しいか”という観点でのチェックが甘かったです。

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LEDの配線(このフットプリントは修正後のもの)

またボトムプレートにはLEDがよく見えるようにスリットを施してみました。

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ダイオードの配置

2つめはダイオードの配置です。ダイオードを”魅せる”配置の代表例として今回も"UraNuma"さんにご登場いただきます。

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"UraNuma"

中央に集約されたダイオードの配置がすごくかっこいい。PCBを裏から見たときのホットスワップソケットの部品群とかもそうですが、こういうメカメカしいのはすごくグッときます。

"Ambi-MINI"は小型なため、ProMicroを中央に配置すると上方部分に少しスペースができてしまいます。今回ここにダイオードを並べてみることにしました。

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実際に集約してみるとKicadでの配線作業が大変で、縦方向のダイオードの間隔広めてやっとの配線でした。おそらく上手な人は効率的なダイオード配線を設計してからスイッチと紐づけていくのかな…とか想像しました。(私の場合はマトリックスの順番通りに左から配置しています)ちなみにPCB裏面から取り付けることで裏からソケットなどとともに魅せることもできます。

③基板発注先の変更

挑戦というほどのことではありませんが、今回は”Ambi”さんで制作をお願いした"ELECROW"さんでなく、"ALLPCB"さんへ発注してみました。私はトッププレートとボトムプレートを同時に投げることが多いので見た目や手触りが良さそうという理由でいつもマット仕上げにするのですが、他社のマット仕上げはどのようなものだろうと考えてのことでした。あ、あとFree Prototypeのクーポン目当てというこもありました。(2021/12/12時点では「法人のみが利用可能」という調整が入ってしまい今後は利用できなくなりました…残念)

組み立て

まず”ALLPCB”さんですが驚くほど速く依頼したPCBが届きました。11/16(火)の夜にWebサイトから発注したところ、11/24(水)に到着。まさに”WE ARE JUST SO QUICK”。

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開封してPCBをチェック。30%キーボードということでコンパクトでいい感じです。"Ambi”先輩(※Withアクリルケース)と比較するとこんな大きさです。

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LEDについては遊舎工房さんで購入。”SK6812MINI-E”です。

SK6812MINI-E(10個入り)shop.yushakobo.jp

LEDチップを初めてちゃんと見ましたが、これが想像以上に小さい!

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大きさの比較画像

これには結構ビビってしまいました。なので事前にいろいろ調べてから望んだのですが、「高い温度で熱し続けるとLEDが壊れる」という知識を習得してしまったことで逆にもっとビビる結果に。手をプルプル震わせながらなんとかはんだ付けしました。笑(今振り返ると、この原因で壊れたLEDは無かったので、はんだごての温度設定さえきちんとしていればそこまでビビる必要はないと思います)

LEDはシリアル接続のためまず1個つけた状態で光るかを確認しましたが、光らず。まぁすでに取り付ける時点ですでにGNDやDINの位置関係がおかしいとは気づいていたんですが…。いろいろ試した結果、ようやく点灯。

その後、基板通りには取り付けることはできませんが、配線を利用して逆方向に電流が流れるように取り付けることで複数LEDを点灯させられることに気づきました。

最終的には、初めに取り付けたLEDを除去する際に基板を損傷したため光らないと思われる1箇所を除いて点灯することを確認しました。

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新たな試みその②の魅せるダイオード配置についてはこんな感じになりました。

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良い気もするし、たいして良くない気もする

新たな試みその③について。発注した"ALLPCB"さん、PCBに汚れも少なく動作も問題ありませんでしたが、マット仕上げには"ELECROW"さんのほうが明確に良いと感じました。"ALLPCB"さんのマット仕上げは指が触れた部分の色の変化がすごくつきやすいです。またデフォルトでは向こう側で使用する製造番号が印字されてしまいます。思いのほか目立つところだったので、今後発注するなら位置を指定するか、有償で消してもらうか、というのも面倒だと感じました。

操作感

まずは30%キーボード最大のメリットであるコンパクトさについて、かなり良いと感じました。自作キーボードを作成しているときなどでデスクが狭い時に、ちょっとした検索したいということがよくありますが、後述の中央キーの操作性も相まって便利に使用できます。

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作業エリアとディスプレイの間の狭いスペースに収まる

"Ambi-MINI"は30%キーボードでありながら、中央にキーが6つあり、アローキーについてはレイヤを変更せずに使用することができ、片手で移動できるのは便利さ感じました。一方でモディファイアキーが両端にないため、これらを駆使する操作、例えばCtrl+Cなどは両手操作になります。(両端のアルファベットキー長押しをこれらに割り当てることで解決することもできますが、通常の打鍵に働いてしまうことがよくあり今は未設定です。ファームウェア側で働く時間調整することで解決できそう)

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そして狙ってはいませんでしたが、30%キーボードのように複数レイヤーを頻繁に切り替える場合、LEDにより現在のレイヤーを視覚的にとらえることができるのはとても便利だと感じました。

おわりに

LED初挑戦の自作キーボード"Ambi-MINI"さん、省スペースなちょっと使いキーボードとしてとても役立っていますし、操作も"Ambi"よりもAmbidextrous(両手利き)している感があり、私としてはかなり満足しています。

ですがかなりニッチな30%キーボードということで、LEDを直したとしても欲しい方がいらっしゃるのか怪しいところ…。今回のLED配線ミスがあるver1.0については、準備ができたら安価にBOOTHで販売してみようと考えています。LEDを修正したver1.1はリクエストがあれば製造したいなと思います。

また今回の検証をもってLEDの実装方法が確認できましたので、お待たせしている"Tenalice-Ambidextrous”のLED搭載バージョンについて進めていきます。といいつつすでにLED搭載のPCB発注まで完了済みで、その結果を踏まえてVer2.0販売を計画できればと思っております。

それでは、良いキーボードライフを。

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