自作キーボード”Telles-GL”について

0.はじめに

今回は、またもやサリチル酸(@Salicylic_acid3)さんが設計された”GL516ケース"に対応した自作キーボード”Telles-GL"を設計したぞ、というお話です。エルゴノミクス大好きな自分にとってはすごく珍しい”ノーマルな”キーボードです。宜しければ最後までご覧ください。

1.GL516ケースとは?

サリチル酸(@Salicylic_acid3)さんが設計された、General Layoutな5行×16列のアルミ製キーボードケースです。単なるケースというだけでなく、スイッチプレートを両端でマウントすることで自由なキーレイアウトを実現し、その自由なレイアウトを公開されている設計手順やKicadテンプレートを使って、簡単に自作できる!という特徴を持っています。それによって現在様々なレイアウトが考案されています。

GL516についてもっと知りたいという方はこちらからどうぞ。

salicylic-acid3.hatenablog.com

2.Telles-GLとは?

一般的なキーボードからテンキーが除かれたをレイアウトを”テンキーレスキーボード”といいますが、その小型版をイメージして設計したキーボードです。

一般的なキーボード(ANSI104/100%キーボード)

テンキーレスキーボード(80%キーボード)

Telles-GL(??%キーボード)

自作キーボードではしばしば大きさを%で表しますが、”Telles-GL”は"40%キーボードをベースとしたテンキーレスキーボード"ということになるかと思います。キー数は64キーになっています。

”Tenkeyless”から略して"Telles"、GL516対応の”-GL”が名前の由来です。

アローキーなどを搭載しつつも、5行×16列に収まるコンパクトなサイズ感が最大の特徴となっています。

3.設計のきっかけ

設計のきっかけは、拙作”BROOKTEN”の後継バージョンを考えていたときのことでした。

cerbekos00.hatenablog.com

Aki27さんのトラックボールモジュールへ対応するためのレイアウトを検討していたのですが、自分でも本当に不思議なのですが、気が付くと小型テンキーレスキーボードのレイアウトが完成していました。

テンキーレスレイアウト自体は見た目がカッコ良くて以前から好きではあったので、深層心理が働いた結果なのかもしれません。

Telles-GLのレイアウト

あらためてレイアウトを見てみると、40%にファンクションキーがきれいに収まっていますね。ちなみに最下段は左端から1.5U、1U、1.25Uとなっています。これはすべて1.25Uとすると1.25Uを6つも使ってしまい一般的なキーキャップセットで埋められない、ということを考慮した結果となっています。

4.設計

設計に関しては特筆するようなことはあまりないのですが、GL516ケースに対応するにあたり当初のレイアウト案から若干変更を加えました。当初はGL516ケース向けにファンクションキーエリアと40%キーボードエリアの間の幅は0.25Uにしていましたが、それだとGL516対応PCBの外形に入らないため0.125Uへ縮めるようにしました。

画像では反対ですがこの後スタビライザー穴も上限反転しました

また、このレイアウトの右側に高い汎用性を感じ、様々なバリエーションをつくろうと考えました。テンキー、大型ロータリーエンコーダ、トラックボールモジュールは、キー配列を崩すことなく対応ができます。

右側エリアのレイアウトパターン

PCBでは上記のレイアウトに対応した配線を通しておきます。といっても、追加で位置を検討して配線するのはエンコーダの左右の入力とOLEDとトラックボールモジュールくらいです。

右側スキマをうまく活用してOLEDとトラックボールモジュールのピンを配置

と、まぁ配線はしてみたものの、すべてのスイッチプレートを作るつもりはなく、今回はテンキーレスのみに絞ります。

スイッチプレートの装飾は、もともと"BROOKTEN"を作るつもりだったのが”Telles”になったので流用することにしました。

画像

GL516対応のキーボードが増えてくると困るのがケースです。すべてにアルミケースは買ってあげられない…そこで今回はバックプレートを作ることにしました。

画像

5.完成

完成したものがこちらです。まずは基板から。

今回は、KeyboardLayoutEditerのイメージそのままで制作してみようと思い、基板の色はホワイトにしてみました。

組み立て途中、テンキーバージョンと大型エンコーダバージョンを仮置きしてみました。

テンキーVer
大型エンコーダVer①
大型エンコーダVer②

今回はテンキーレスのスイッチプレートしか作っていないため仮置きだけですが、それぞれに個性が出ててすごく良さそうです。ちなみにトラックボールモジュールは手元にOLEDがなかったため仮置きは断念しました。

組み立てに関しては、ダイオードはPCBAで取り付け済みなので、ソケットとLED、ProMicroをはんだ付けします。

隙間が少なく部品がぎっちり

スイッチとキーキャップを取り付けて完成!きちんとGL516ケースに収まりました!

GL516ケース装着時

GL516ケースを使用しない場合のバックプレート

バックプレート装着時

左上のEscキーや右上の3連キーはアルチザンキーキャップ置き場にぴったり

実際にしばらく使ってみた使用感を少し。

新たな発見があったのは、レイアウトの右側です。ここには移動に特化したキーであるHome,End,PageUp,PageDown,そしてアローキーが詰まっています。

60%以下のキーボードでは省略され、後方のレイヤーに追いやられているこれらのキーについて、単体で押下できるというのは思いの外すごく便利に感じました。「なるほど。本来のキーボードの配列って移動関係のキーをここに集約していたのか。これは感心するなぁ」という、一周回って60%以下のキーボードを経由したからこそのありがたみを感じることができました。

ファンクションキーに関しては機能的な新発見はありませんが、見た目に大きく影響を与えてくれていることに気が付きました。ファンクションキーの間の小さなスペースがキーボードにアクセントを加えてくれているんですよね。

また余白があるからこそ、アルチザンキーキャップが映えているような気がします。

もっとも、個人的には40%+ファンクションキー+テンキーという構成が実は最強なのでは?とも思っています。理由としてはアローキーと移動キーは、実は非NumLock状態のテンキーで代用できるんですよね。

小型キーボードとしての狭い面積に40%とファンクションキーとテンキー、すべてが詰まっている感じ、すごくよさそうです。

今後、新たにスイッチプレートを作るのであれば大胆にも"スイッチプレートを2つに割って、右側エリアだけ着せ替え”ができるようにしようかなと考えています。

そのために実はPCBにトレイマウントできる穴を開けていた策士ケルベコス

そして、最近ドハマりしている3dプリントケースもついでに設計してしまおう。

Tenalice-ambidextrousの3DPケース

Ambi10の3DPケース

あぁ、こうしてまた深く沼に入り込んでゆく...。

6.頒布について

いつものように余剰分についてBOOTHにて頒布を行いたいと考えています。GL516ケースへの装着はもちろん、バックプレートとスペーサー類も付属しTelles-GL単体でも組みあがるようにしたいと思います。(まだページは作っていません)

cerbekoskeyboard.booth.pm

あと、ほかのレイアウトを使いたいという人が万が一現れたときのために、各レイアウトのスイッチプレートはダウンロードデータとして公開いたします。アクリルカットサービスなどにご活用いただければ幸いです。

7.おわりに

以上、”GL516ケース"に対応した小型テンキーレスキーボード"Telles-GL"をつくったお話でした。

今回、サリチル酸(@Salicylic_acid3)さんのDiscodeへお邪魔しながら設計を行いました。チャットで初期のデザインを褒めていただいたりしてやる気がとても出たことを覚えています。また、設計に関して相談したり、他の方の質問を参考にしたりして、ヒントを得るような場面もありました。

そういえば、はじめのほうに出てきた「このキーボードは??%キーボード?」という問いに対して、コミュニティの方からは「テンキーと数字キーがないからTNKL?」という回答があり、「おお、なるほど!」と感心したりもしました。

こうした刺激を受けて進められることはコミュニティに参加するメリットですよね。

引き続き3DPプリントケース制作は投稿していきたいなと思っていますので、宜しければお気軽にコメント頂ければと思います。

それでは、良いキーボードライフを。