分割⇔一体型40%キーボード「Maglit40」~ビルドガイド~

"Maglit40"はTRRSケーブルによる分割キーボード、磁気ポゴピンによる一体型キーボードのどちらにもなる40%キーボードです。QMKファームウェアで動作し、レイヤー機能により少ないキー数でも通常のキーボード以上にたくさんのキーを設定できます。

本記事はビルドガイドとして、Maglit40の組み立て手順と仕様について記載しています。Maglit40の仕様だけ知りたいという方は、3.仕様をご参照ください。

更新履歴

2023/6/11 初版公開
2023/6/24 ピンヘッダとPCBのはんだ付け手順を追記
2023/9/14 RemapのURLを変更
2023/9/23 QMK19対応に伴う追記

0.組み立ての前に

  • はんだごてを使用して制作します。はんだごての小手先は高温になり、やけどや火事の原因になりかねませんので取り扱いにはくれぐれもご注意ください。
  • 作成の前に、当ビルドガイドに一通り目を通していただき、必要な物が充足しているかや作業順序についてお確かめください。
  • 作成には数時間程度かかりますので時間に余裕をもってお取り掛かりください。

1.ご用意いただくもの

ご用意いただく必要があるものは、①BOOTHで頒布しているキット、②別途ご用意いただく部品、③はんだごてなどの組み立て工具です。それぞれBOOTHの販売ページに記載しておりますのでご確認ください。

cerbekoskeyboard.booth.pm

またBOOTHにも記載しておりますが、別途3Dプリントケースを作成(調達)する必要があります。ケースの3Dモデルは、こちらから無料でダウンロードできます。

cerbekoskeyboard.booth.pm

写真のものは、JLCPCBで以下のとおり調達しました。

  • キーボードトップケース:9000R Resin
  • キーボードボトムケース:9000R Resin

3d.jlcpcb.com

2.組み立て

以下の手順で組み立てることを推奨いたします。順序を間違えるとリカバリーが難しい場合がありますので、組み立て前に一通り手順をご確認ください。

ファームウェアの書き込み

*すでに組み立て済みの場合のファームウェアアップデート方法はこちらを参照してください。

Remapよりファームウェア(uf2ファイル)をダウンロードします。

remap-keys.app

Remapは、Web ブラウザーからQMKファームウェアを操作し、キーボードのキーマップを変更したり、LEDを設定したりできるウェブサイトです。キーボードカタログという機能からファームウェアをダウンロードできる仕組みとなっています。

XIAO RP2040の”BOOT”ボタンを押しながらUSBを接続すると、XIAO RP2040のドライブが表示されます。ここへダウンロードしたuf2ファイルをコピー(ドラッグ&ドロップ)します。すると自動的にリブートされ、ファームウェアが書き込まれます。

ファームウェアの書き込みは以上で終了です。

②LEDのはんだ付け

LEDには取り付ける向きがあり、”SK6812MINI-E”は”GND"にナナメの切り込みが入っています。f:id:Cerbekos00:20211217225401p:plain

このナナメがどこに位置しているかによって正しい向きかどうかを判断します。またLEDの接続の仕組みとしてシリアル接続となっています。”4 DIN”(データイン)からLEDの信号を受け取り、"2 DOUT"(データアウト)へ信号を渡しています。

以下、別の基板の写真となっていますが、Maglit40でも同じとなります。LEDの正しい向きは次の写真のとおりです。

LEDの端子4か所をはんだ付けします。LEDは高温に弱いため、260度程度で、1か所ずつはんだ付けしては時間を空ける(その間に他のLEDをはんだ付けする)というのを繰り返すようにします。

溶接・溶着を円滑にしてくれるプリント基板用フラックスなどを使用するとはんだが乗りやすいと思います。

ダイオードのはんだ付け

正しいダイオードの向きは下のとおりとなります。

ダイオードは小さく、ピンセットでつまみながら取り付けることになります。取り付け操作しやすいよう片側に予備はんだを行います。

ダイオードの向きに注意してピンセットでつまみながら、予備はんだをはんだごてで温め、スライドするようにダイオードをはんだづけします。

反対側をはんだ付けしてダイオードの取り付け完了です。

ダイオードは61か所あります。頑張ってすべてはんだ付けします。

ホットスワップソケットのはんだ付け

ホットスワップソケットの正しい向きは白い線が隠れるような向きです。

こちらも予備はんだをしておく方がはんだ付けしやすいと思います。

ホットスワップソケットを正しい向きで乗せ、ピンセットで押さえながら、予備はんだを温めます。ソケットがストンと穴にはまるまで行います。

反対側もはんだ付けして完了です。

ソケットははんだのつけ忘れが割と多いので、つけ忘れがないかを全体的に確認しましょう。

⑤TRRSジャックのはんだ付け

ジャックの挿入口が外側に向くように取り付けます。基板の裏面から差し込むようにしてください。差し込んだら念のためマスキングテープで固定します。

基板の表面からはんだ付けします。

⑥磁気ポゴピンのはんだ付け

磁気ポゴピンにはオス、メスがあります。端子が出ている側がオスです。

オスは端子が出ている
メスは端子は出ていない

Maglit40の場合、左右の基板のどちらがオスでもメスでも大丈夫です。

はんだ付け前に端子が合っているかチェックしましょう

磁気ポゴピンを取り付けるのは基板の裏側となります。(枠線ある方です)

裏面の線を目安に位置合わせを行います

位置を決めたらマスキングテープで固定し、基板をひっくり返し、表面から3つのピンをはんだ付けします。

⑦XIAO RP2040のはんだ付け

Maglit40では、左右のピンの数が異なるためピンヘッダをカットする必要があります。

ピンヘッダをニッパーなどでカットします。

ピンヘッダを裏面からPCBへ差し込みます。

ピンヘッダにXIAO RP2040を、”BOOT”ボタンが上にくるように差し込み、XIAO RP2040とピンヘッダをはんだ付けします。

ピンヘッダによってはピンが片側に長く突き出てしまう場合がありますので、その場合はニッパーなどでカットしましょう。

【6/24追記】

その後、PCBの表面から、ピンヘッダとPCBをはんだ付けします。

⑧動作確認

左右をお好みの方法で繋いでからUSBケーブルを差し込み、動作を確認します。
<LEDの確認>
Maglit40のLEDはインジケータとなっているため、通常時は点灯しません。このためLEDの点灯確認は、CAPSLOCK状態とするか、レイヤー切り替えをする必要があります。CAPSLOCKは、左右のシフトキーを同時押しでCAPS_WORDが起動するためそれで確認できます。レイヤー切り替えは中央下の3キーがレイヤー切り替えキーとなっています。

もしLEDが点灯しない場合、下記について順に確認してみてください。
・はんだの量が足りていない、または多すぎて隣と接合している → はんだごてやはんだ吸い取り線を使いはんだの量を調整してください。
・LEDの取り付け向きが誤っている。 → はんだ吸い取り線を使い、慎重にはんだを除去してから向きを正しく取り付け直し、はんだ付けしてください

<キースイッチの確認>
現状はキースイッチを取り付けていないため、ピンセットでホットスワップソケットの両端を導通させて文字が表示されるかを確認します。

反応しない場合、下記について順に確認してみてください。
ダイオードホットスワップソケットのはんだづけがうまくできていない → はんだを少し足して(はんだづけして)動作確認してみてください
ダイオードの向きが反対 → ダイオードのはんだをはんだ吸い取り線で除去し、予備のダイオードを正しい向きに取り付け、はんだ付けしてください

⑨ケースへの取り付け

ケースへの取り付けの前に注意点を記載します。
打鍵音などの向上のためテープやポロンシートなどをPCBへ貼り付ける場合、外周数ミリはあけておいてください。PCBをケースを差し込むという方式のためです。

ケースへ基板を差し込みます。寸法ぎりぎりとなっています。

お好みで背面にダイソーなどでゴム足を取り付けます。

キースイッチを取り付けます。

キーキャップを取り付けて完成です。

3.仕様

最後に、デフォルトキーマップとLED、CAPS_WORDについて記載します。なお、QMKファームウェアの細かい設定内容についてはこちらの記事に記載しています。

cerbekos00.hatenablog.com

3-1.デフォルトキーマップ

デフォルトキーマップは次の写真とおりです。REMAPから変更いただくことが可能です。

3-2.LEDインジケータ

レイヤーオン、CapsLock、NumLock状態のときLEDがカッコの中の色に変わります。

  • Layer1(赤)
  • Layer2(青)
  • Layer3(緑)
  • CapsLock(黄)
  • NumLock(マゼンタ)

3-3.CAPS_WORD

起動すると「単語」にCAPSLOCKが働かせることができる機能です。左右シフトキーの同時押し(片方はdual-role keyでも可)やシフトキーの2連打で起動させることができます。スペースやEnterを押すか、何も押さないで5秒で解除されます。

docs.qmk.fm

3-4.ファームウェアのバージョンアップ

すでに組み立て済みのMaglit40に新しいファームウェアを書き込む場合、次の手順で行うことができます。(物理的にXIAO RP2040の”BOOT”ボタンを押す必要はありません)

  1. REMAPからファームウェアをダウンロードする
  2. USBケーブルを抜線する
  3. ファームウェアを書き込むキーボードの一番左上のキー(デフォルトキーマップでは、左手側はESC、右手側はYのキー)を押しながら、USBケーブルを接続する
  4. 表示されたXIAO RP2040のドライブへ、ダウンロードしたファームウェアをドラッグ&ドロップでコピーする
  5. 一度USBケーブルを抜き差しする

なお、ほかの方法として、Bootloaderキー(デフォルトキーマップではLayer2の一番左上のキー)を押すことでもXIAO RP2040のドライブを表示することができます。

おわりに

ビルドガイドは以上です。大変お疲れ様でした!

Maglit40は小型なキーボードなのでレイヤー切り替えを駆使してキーマップを試し、ご自身の最高の1台に仕上げて楽しんでいただけたら幸いです。またせっかくなので3Dプリントケースの塗装にもチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

最後に、気が向いた方は、完成した"Maglit40"をTwiiterで見せていただけると、作者として大変うれしく思います。(ハッシュタグは#Maglit40でお願いします!)

それでは、良いキーボードライフを。